ともりの蹴球戦記

サッカーを基本に、気付いたこと、思ったことを気ままに書いていきます。

全盛期とは違う役割で活躍中の香川が日本代表で輝けない理由

ドルトムントで輝きを取り戻した香川だが

 

今シーズン公式戦6試合を戦い5ゴールと波に乗る香川。

 

 

この輝きを日本代表に落とし込んでほしいと誰もが願っているが、それがかなわない背景にはいったい何があるのだろうか。

 

 

役割の違い。選手の違い

 

現在ドルトムントでは、ビッククラブからも注目される選手に囲まれてプレーしている。しかも香川の好きな連携からの崩しが可能なメンバーが周りを固めているのだから、活躍できなかったらそれこそ叩かれてしまいそうだ。

 

 

 以前の香川はトップ下で絶対的な地位を確立し、ゴール数もチーム2位の成績を収めていた。パスセンス、ゲームメイク、得点力にずば抜けた才能を発揮し、ファーガソンベンゲルモウリーニョなどそうそうたる監督から気に入られていた。

 

 

そしてマンチェスターに旅立ったのは、もはや既定路線と言っていいほど現実的な選択で、活躍を期待していたのはなにも日本人のファンだけではなかっただろう。

 

その当時も、ゲッツェレヴァンドフスキギュンドアン、トルコに旅立った親友、グロスクロイツに囲まれて素晴らしいチームを形成していた。

 

 

しかし現在の香川を取り巻く状況は少し違う。

 

チームは不調からの脱却を目指し、前線は3トップ状態。現在はトゥヘルの采配のおかげかいいスタートを切れたが、まだまだ油断はできないだろう。

 

香川に求められるチームの役割も以前とは少し違っている。

 

現在香川のポジションは、CHでどちらかというと中盤の舵取りをする中で、後目にギュンドアン、前目に香川のようなポジションになっている。

 

バルサでいったら、シャビとイニエスタのように横並びより少しイニエスタが前目のように見えていた時と同じ状態だ。

 

つまり、ギュンドアンと香川、ヴァイグルを含め、中盤で崩しの切っ掛けを作り、前の3人の得点力を上げるための拙策が打たれている。

 

全盛期の香川の役割と、現在の役割は、

 

全盛期   得点 > ゲームメイク

今季    得点 < ゲームメイク

 

になる。

 

得点に関してイップスともいわれている香川だが、トゥヘルはそこを見越して少し後ろで香川の別の部分の良さを引き出そうとしている。

 

先日香川も、

前の自分に近づくことは不可能だと思う 

 と語っているように、いまだにイップスは克服できていないし、その解決策も見えていないのだろう。

 

それでもこれだけの活躍を見せていることが規格外なのだが。

 

以前の役割を期待するハリルホジッチと香川のジレンマ

 

日本代表では主にトップ下を務めている。

 

フォーメーションは4-3-3とあらわされることが多いが、ハリルの期待しているプレーはトップ下としてゲームメイクにゴールにと活躍を期待されている。

 

このブログでも再三話していることだが、香川がホールでいいプレーをするには、いいタイミングでボールを付けてくれる選手がいないと話にならない。

 

マンUではキャリックドルトムントではギュンドアンやヴァイグル。

全盛期のシャヒンなんかもいいタイミングでパスを預けてくれていた。

 

その点日本代表では、長谷部しかり、山口しかり、遠藤も少しテンポが遅くてうまく香川を生かせられていないと感じることが多かった。

 

現在可能性がある選手と言えば、柴崎が思い当たるが、柴崎もいいタイミングで躊躇して安パイを選ぶ。柴崎くらいのパスセンスと能力があればそこを通すパスを出せるようになったら一気にレベルアップしそうな感じがするのだが、その期待には未だに応えてもらってない。

 

ワイドの選手も基本的に裏でもらうというよりも、足元でもらってアクションを起こすタイプで、香川のパスセンスや崩しのアイディアを生かせていない。

 

そのタイプの選手をドルトムントで探すと、前期ドルトムント時代のゲッツェ、現在のロイスがそれにあたりそうだが、両選手は裏に抜けるのもうまいので、相手選手に読まれず対応できない所を崩す事ができる。

 

しかし現在の日本代表にそこまでの才能を見せつける選手はまだ出てこない。

 

個人能力といった点で言ったら、アジアでは本田圭佑が抜けた存在だが、香川のサッカー観と違うので効果的な崩しが出来て無いようにおもう。

 

宇佐美、武藤にはかなり期待しているのだが、崩しのソリューションとして考えた時にまだまだ稚拙さを感じられる。

 

香川ももういい歳なので、後輩を引っ張り、自分との連携を向上させるために、本田のように引っ張る役割もそろそろしてほしい。

 

左サイドの崩しが、前回のワールドカップ前の状態(トップ下・本田、左・香川、SB・長友)以上に機能するようになれば香川も輝くようになりそうだが、それを作るのは、今は香川の役割でもあると思う。

 

もう一つ。

 

香川がハリルから期待されている役割が、全盛期の時の香川だということだ。

 

自分でも「前の自分に戻るのは不可能」と感じているのには、それなりに原因があるのだろう。

 

イップスに陥るとそこから這い上がれない人も多いと聞くが、同じ状態なのではないだろうか。

 

そこから抜け出せる、その光明のようなものが見えているなら可能性はあるのだろうが、先が見えなかったら上の言葉もしょうがないと感じる。

 

ただ、それを分かって香川の別の良さを使おうとするトゥヘルと、未だ以前の香川を見ようとするハリルとの間でのジレンマが、香川の輝きを損なっているようにも思う。

 

トゥヘル監督の下では、以前の香川とは別人のように、別の良さを引き出している。

 

ハリルもトゥヘルと同じように、以前の香川を忘れて、別の香川をうまくフィットさせる取り組みをしてもいいのではないだろうか。

 

それは応援する僕らも同じなのだが、香川がとびぬけた才能を持っているのだから、得点力に優れたセカンドストライカーの香川から、ゲームメイクに秀でたハーフの選手と見方を変えてあげることも必要かもしれない。

 

目に見える結果だけでなく、その前の部分でも世界レベルの才能を発揮できる数少ない日本人なのだから。